Givery Givery, Inc.
Training Handout · 2026 年 7 月版

AI 活用と業務効率化

第 3 回 エンジニア向け|法研システムズ様 開発チーム向け

提供
ギブリー株式会社 / 講師 安田 光喜
配布先
株式会社 法研システムズ 御中
所要
3 時間(オンライン / 10〜15 名想定)
題材
Gemini ハンズオン × 開発ワークフロー × ガバナンス
版数
v1.1(2026 年 7 月)
本資料は法研システムズ様向け生成 AI 研修(全 3 回)の第 3 回で配布する受講者用ハンズオンガイドです。Gemini を軸に開発タスクを体験し、最終的に「開発ワークフロー × AI 活用マップ」と「AI 併用コーディングのチームルール雛形」を持ち帰ります。
SECTION 01 / ORIENTATION ・ 15 min

1. 第 2 回振り返りと本日のゴール

本日 3 時間で、自チームの開発ワークフローに AI を組み込む 1 ヶ月計画を作って持ち帰ります。手を動かす演習はブラウザ Gemini(対話型)で行います。全員が確実に使える環境だからです。Copilot / Cursor / Claude Code のような IDE のエージェント機能は、対象を絞って次回以降に扱う発展テーマとして、講師デモで世界観だけお見せします。

対象
法研システムズ様 開発チーム 10〜15 名
形式
オンライン研修。座学 40 分 + ハンズオン 5 演習 + ワークフロー設計 30 分 + デモ 12 分
使うもの
業務 PC(Google Workspace 環境)/ Gemini / NotebookLM / Google スプレッドシート
持参物
第 2 回の自部署 AI 活用計画書、可能なら自チームの開発ワークフロー図
ゴール
開発ワークフロー × AI 活用マップ + AI 併用コーディングのチームルール雛形

1.1 本日のタイムテーブル

時刻目安セッション形式持ち帰るもの
0:00 - 0:15オリエンテーション共有本日の進め方の理解
0:15 - 0:55リスクマネジメントとガバナンス講義エンジニア固有のリスク判断軸
0:55 - 1:50Gemini を用いた開発タスク体験(演習 1〜5)ハンズオン上流〜運用の AI 活用体感
1:50 - 2:40開発ワークフロー改善と振り返り(演習 6 + デモ)ハンズオン + デモワークフローマップ、チームルール雛形
2:40 - 2:50振り返りと閉会共有1 ヶ月後の試行計画

1.2 配布データの展開

配布データ ZIP を、研修開始前にデスクトップへ展開してください。

配布データの中身

③エンジニア/配布データ/
├── README.md
├── handson_guide.md
├── hints/                               ← 演習 1〜6 答え合わせ用
│   ├── step01_masking_hint.md             ← 入力前のマスキング判断
│   ├── step02_requirement_decompose_hint.md
│   ├── step03_code_review_hint.md
│   ├── step04_test_generation_hint.md
│   ├── step05_bug_analysis_hint.md
│   └── step06_workflow_map_hint.md
├── templates/
│   ├── 開発ワークフロー×AI活用マップ_テンプレート.csv
│   ├── PRレビュー観点リスト_テンプレート.md
│   └── AI併用コーディング_チームルール雛形.md
├── demo_data/
│   ├── マスキング練習_生ログ.txt
│   ├── 要件メモ_新規機能.md
│   ├── レビュー対象コード_python.py
│   ├── テスト対象関数_python.py
│   └── 障害ログ_dummy.txt
└── _reference_完成例/                   ← 研修中は開かない
大切な約束

_reference_完成例/ は答え合わせ用です。講師の指示があるまで開かないでください。本物のコード、社内リポジトリ情報、顧客データは入力しないでください。すべて配布データの架空コードを使ってください。業務では「どこを伏せてどこを残すか」を自分で判断します。その線引きは Section 03 の演習 1 で練習します。無料の個人向け Gemini は入力が品質改善に使われる場合があるため、業務データを扱うときは会社が契約したプラン(入力を学習に使わない設定)を使ってください。

SECTION 02 / LECTURE ・ 40 min

2. リスクマネジメントとガバナンス

本セッションは座学中心です。エンジニア固有の 3 つのリスク(著作権・脆弱性・コードレビュー方針)を押さえ、Linux Kernel と Anthropic の最新方針を見ながら、自社向けガバナンスの作り方を考えます。

2.1 著作権・ライセンスリスク

2025 年に Doe v. GitHub 訴訟(GitHub Copilot 集団訴訟)が和解。GitHub は「学習データと一致する出力をブロックするフィルタ」と「出典帰属オプション」の提供義務を負いました。ただし「類似コード」は射程外で、実務では引き続き注意が必要です。

2025
Doe v. GitHub 和解
30 条の 4
日本著作権法 学習段階の原則適法(享受目的があれば適用外)
補償あり
Gemini Code Assist Standard / Enterprise は IP 補償条項付き
OSS フィルタの実装状況

GitHub Copilot の「duplicate detection filter」は Business / Enterprise 契約で有効、Cursor / Claude Code / Gemini Code Assist もそれぞれ類似機能を提供。ただし Copilot Coding Agent(自律実行モード)には現時点でフィルタが適用されない穴があります。実務では「フィルタ+人間レビュー+商用契約」の三段構えが現実解です。

2.2 脆弱性リスク

45%
AI 生成コードに脆弱性が含まれる割合(Veracode、2025 年調査)
4× / 10×
AI 併用で生成速度 4 倍、脆弱性検出 10 倍(Apiiro、2025 年)
20%
AI 推奨パッケージのうち存在しない(slopsquatting 研究)

押さえる脆弱性パターン

パターン具体例対策
SQL インジェクション文字列連結クエリ、ORM 不使用パラメータ化クエリ、SAST
認証情報のハードコードAPI キー、DB パスワードのコード埋込環境変数、シークレットマネージャ
個人情報のログ出力print/logger で氏名・契約番号を出力マスキング、ログレベル管理
SlopsquattingAI が推奨した架空パッケージを攻撃者が実在登録依存パッケージ実在確認、SCA
プロンプトインジェクションコメント経由で AI エージェントを乗っ取りClaude Code / Gemini CLI で CVE 報告例あり
2025 年に確認された CVE 実例

Cymulate が 2025 年に CVE-2025-54794(Claude Code パス制限バイパス)/ CVE-2025-54795(Claude Code コマンドインジェクション、CVSS 8.7)を公開。Claude Code、Cursor、GitHub Copilot Agent、Gemini CLI のすべてに対し、コメント経由の「Comment and Control」攻撃が成立することが報告されています。出典:CymulateSecurityWeek

2.3 コードレビュー方針:Linux Kernel と Anthropic の最新ルール

Linux Kernel 公式ポリシー(2025 年 11 月成立)
Torvalds 主導で AI 支援コードを条件付き許可。Signed-off-by: は AI 禁止、代わりに Assisted-by: AGENT_NAME:MODEL_VERSION タグを必須化。責任は提出者の人間に帰属、完全自動生成パッチは拒否。
Anthropic Code Review(2026 年 3 月発表)
Claude Code Teams / Enterprise 向けに複数エージェント並列レビューを提供。CLAUDE.md(規約)+ REVIEW.md(観点)でカスタマイズ可、PR 承認は人間に留保。社内導入後、実質コメント付き PR が 16%(導入前)→ 54%(導入後)に上昇したと報告。

「AI に任せる / 人間が握る」の基本線引き

AI に任せて良い(叩き台レベル)

  • 定型コードの初稿生成
  • リファクタリング提案
  • テストケースの叩き台
  • ログ要約・エラー解析
  • ドキュメント・コメント生成
  • 設計レビュー観点出し

人間が必ず握る(最終判断)

  • アーキ最終決定
  • 本番デプロイ承認
  • セキュリティ要件の最終判断
  • 重要顧客向けの実装判断
  • AI による意思決定(採用・契約可否・与信・給付可否等は禁止)

国内外の規制動向(2026 年前半)

AI 事業者ガイドライン 第 1.2 版(2026 年 3 月 31 日)
総務省・経済産業省が公表。AI エージェント / フィジカル AI のリスク整理、リスクベースアプローチと AI ガバナンスの具体化が追加されました。開発現場のガイドライン策定の下敷きになります。
日本の AI 法:2025 年 9 月 1 日全面施行
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律。2025 年 6 月 4 日公布。内閣に AI 戦略本部を設置し AI 基本計画を策定、実態調査・情報提供要請・指導等を規定。罰則のない理念法です。
出典:内閣府e-Gov
EU AI Act:2026 年 8 月 2 日に大半の義務が適用開始
GPAI モデル義務は 2025 年 8 月 2 日から適用済み。ガバナンス構造と AI Office の本格執行(制裁金等)が 2026 年 8 月 2 日に発効。Digital Omnibus の暫定合意(2026 年 5 月 7 日)により、Annex III の高リスク AI 義務(採用・与信・生体認証等)の適用は 2026 年 8 月 2 日から 2027 年 12 月 2 日へ延期されました。

2.4 ベストプラクティス:DORA 2025 と業界実態

DORA 2025:AI 採用率 90%、80% 超が生産性向上
前年比 +14 ポイントで AI 採用率が 90% に到達。80% 超が生産性向上、59% がコード品質改善を報告。ただし「ストロングチームはより強く、弱いチームは弱点が増幅される」という構造的知見が中核。AI を入れただけでは効かず、自動テスト・バージョン管理・フィードバックループが弱いとデリバリー安定性は逆に悪化する。
Google:新規コードの 75% が AI 由来(2025 年、前年 25% から)
2024 年の 25% から 2025 年に 75% へ、約 1 年で 3 倍。社内開発の主流が AI 補助前提に転換した一例。
出典:TechSpot
メルカリ(2025 年):社内 AI 利用率 95%、AI 生成コード 70%、開発量 64% 増
Project Double で「設計→実装→テストまで全 AI 実行」のフローを試行、工数を 1/5 に圧縮した事例も公開。
Stack Overflow 2025:AI 使用率 84%、信頼率 29%(前年 40%)
使用は広がる一方、信頼は逆に落ちている。最大の不満は「ほぼ正しいが微妙に違う」(66%)と「AI 生成コードのデバッグが余計に時間を食う」(45%)。盲信せず、検証する習慣が必要。
SECTION 03 / HANDS-ON ・ 55 min

3. Gemini を用いた開発タスク体験

5 つの演習を Gemini で体験します。入口に置くのは「入力前のマスキング判断」です。今回いちばん身につけてほしい、どこまで伏せて入れるかの線引きを最初に手を動かして覚えます。続いて上流(要件分解)/レビュー/テスト/障害分析の 4 工程。すべて「考える → 書く → 実行 → 答え合わせ」の 4 ステップで、Step 4 で配布データの hints/ を開きます。

データの取り扱い 3 環境 × 情報種別

Gemini は使うアカウントの種類で「入力が学習に使われるか、人が中身を見るか」が変わります。会社アカウント(Google Workspace)は契約上、入力が学習に使われない設計です。それでも機密情報や個人情報は、念のため入れないのが実務の主流です。迷ったら入れない、やむを得ないときだけ次のマスキングをする、と覚えてください。

データの種類無料版の Gemini個人の有料プラン会社アカウント(Workspace)
入力が学習に使われるか初期設定では使われることがある(設定でオフ可)無料版と同じ(オフ可)契約上、使われない
機密情報(社外秘・契約・技術情報)原則入れない原則入れない学習されない設計でも原則入れない。必要時はマスキング
個人情報(氏名・連絡先・顧客データ)入れない入れない原則入れない。必要時は伏せ字で最小限だけ
要配慮個人情報(健康・医療・病歴など)入れない入れない原則 NG。社内の承認手順と伏せ字化のうえ最小限
念のため入れない・迷ったら入れない

会社アカウントは契約で学習されない設計でも、念のため入れない・迷ったら入れない、を徹底してください。この表は一般的な目安です。何を入力してよいかの最終判断は、必ず自社の情報取り扱いガイドラインに従ってください。

マスキング代表 4 手法

手法どうする
ダミー置換(今回の中心)実名・社名を仮の呼び名へ一律置換田中花子→顧客A、○○健保→A社
列ごと削除CSV の個人情報列を丸ごと消す(塗るより確実)氏名・電話・住所・メールの列を削除
一般化細かい値を大きなくくりへ丸める37 歳→30 代、142,853 件→約 14 万件
仮名化 / 匿名化記号へ置換。仮名化は対応表で戻せる、匿名化は戻せない田中花子→U001(対応表は別に厳重保管)
配布ダミーが最初から「顧客A」な理由

配布データの demo_data は、はじめから顧客Aや <DB_HOST> の形で用意しています。実務では本物のデータをそのまま扱わず、AI に渡す前にこの形へ加工してから使うためです。本セッション冒頭で、講師が加工前の生データを画面で見せ、どこをどう置き換えるかを実演します(手元での加工は任意)。加工後の状態が、そのまま AI に貼ってよい状態の見本になります。

3.1 演習 1:入力前のマスキング判断 [ 13 min ]

本物のデータをそのまま入れないの一歩先です。全部消すと Gemini が働けず、残しすぎると漏れます。その中間を自分で決める練習をします。

STEP 1 / 考える ・ 3 min
配布データの demo_data/マスキング練習_生ログ.txt(架空、顧客 ID・氏名・認証情報・内部ホスト名・実データが混在)を読み、Gemini に入れてはいけない箇所に印を付ける
STEP 2 / 書く ・ 5 min
伏せるべき箇所をダミー値・型・スキーマ・プレースホルダに置き換え、マスキング版を自分で作る(例:顧客 ID → 顧客A、host → <DB_HOST>、142,853 件 → 約 14 万件)
STEP 3 / 実行 ・ 3 min
マスキング版を Gemini に貼り、障害の原因の見立てを 3 つ出させる。伏せても回答品質が落ちないことを確認
STEP 4 / 答え合わせ ・ 2 min
hints/step01_masking_hint.md で「伏せる/残す」の線引きと、伏せても原因にたどり着ける理由を確認
迷ったときの判断

「この 1 行が外に出て困る人がいるか」で決めます。困る人がいれば伏せる、エラー種別やスタックトレースのような技術的事実だけなら残す。認証情報(API キー・パスワード・トークン・Webhook)は、形を変えても入れません。この線引きはチームルール雛形 第 2 条の可否テーブルと対応しています。

この演習で持ち帰るもの
マスキングは黒塗りではなく置き換えです。実データを型やスキーマに変えると、Gemini は構造を理解したまま安全に答えられます。禁止か許可かの二択で止めず、どこまで抽象化すれば入れて良いかを自分で判断できる状態を目指します。
OK 基準

認証情報と個人情報が消え、Traceback・件数の桁が残ったマスキング版を 1 つ作れた。

3.2 演習 2:要件分解と仕様ドラフト [ 10 min ]

STEP 1 / 考える ・ 2 min
配布データの demo_data/要件メモ_新規機能.md(架空、健診ダッシュボード要件)を読んで、曖昧な点を 5 個メモ
STEP 2 / 書く ・ 4 min
5 要素プロンプト(第 2 回で習得)で、Gemini に (A) 曖昧性指摘 (B) 仕様ドラフト の 2 つを依頼
STEP 3 / 実行 ・ 4 min
出力を読み、自分のメモにあった指摘と AI が出した指摘の差を観察
STEP 4 / 答え合わせ ・ 2 min
hints/step02_requirement_decompose_hint.md を開いて、参考プロンプトと _reference_完成例/仕様書ドラフト_想定出力.md の粒度を確認
この演習で持ち帰るもの
「要件 → 曖昧性指摘 → 仕様ドラフト」の流れを 1 ターンで回せること。実務では営業ヒアリング → AI 整理 → 営業に確認 → ドラフト → PdM レビュー、の 5 ステップを 1 日に圧縮できます。AI 出力には必ず「推定」と「補完しない」の制約を入れてください。
OK 基準

曖昧点を 3 個以上抽出し、機能仕様ドラフトの見出しが埋まった。

3.3 演習 3:コードレビュー観点出し [ 12 min ]

STEP 1〜4
配布データの demo_data/レビュー対象コード_python.py(架空、あえて問題を含むコード 30 行)を Gemini に貼って 5 観点(バグ・セキュリティ・パフォーマンス・可読性・テスト)で指摘出し

期待される指摘件数:8〜15 件。SQL インジェクション、個人情報のログ出力、二重ループの論理バグなど Critical 4 件・Major 5 件・Minor 3 件程度が出ているはず。答え合わせは hints/step03_code_review_hint.md_reference_完成例/コードレビュー指摘_想定出力.md

OK 基準

5 観点それぞれに最低 1 指摘が付き、AI レビュー後に人間確認の一言を添えた。

セルフレビューでの活用

本演習の運用イメージは「PR を立てた直後に AI で 1 周セルフレビュー」。レビュアー人間に渡す前のセルフチェックとして使うと、レビュアー負荷が大幅に減ります。ただし「AI レビュー → 人間レビュー」の 2 段階は崩さないでください。

3.4 演習 4:テストケース生成 [ 10 min ]

STEP 1〜4
配布データの demo_data/テスト対象関数_python.py(架空、保険料算出関数)に対して、pytest のユニットテストを 3 段階(正常系 5 件以上・境界値 5 件以上・異常系 5 件以上)で生成

AAA パターン(Arrange / Act / Assert)と命名規則(test_<対象>_<条件>_<期待結果>)を必ず指定。答え合わせは hints/step04_test_generation_hint.md_reference_完成例/テストケース_想定出力.py

OK 基準

正常系・境界値・異常系の 3 段階が揃い、命名規則が指定どおりになった。

3.5 演習 5:バグ原因特定 [ 10 min ]

STEP 1〜4
配布データの demo_data/障害ログ_dummy.txt(架空、Lambda の MemoryError ログ)を Gemini に投げて、原因仮説を 3 件、確認手順つきで出させる

「過去の経緯(先月までは正常、2 週間前にリファクタ、契約数が前月 +12%)」を AI に必ず伝える。これが仮説の質を決める。答え合わせは hints/step05_bug_analysis_hint.md_reference_完成例/バグ原因分析_想定出力.md

OK 基準

原因仮説が 3 件出て、各仮説に確認手順が 1 つ以上付いた。

AI 障害分析の限界

AI は「ログにある事実」と「一般論」は得意ですが、「自社固有の運用知識」「過去の自社インシデント」は知りません。社内 NotebookLM に過去のポストモーテム集を入れて検索式で組み合わせる運用が現実解。AI が「○○ライブラリのバグです」と言ってきたら、必ず該当バージョンの GitHub Issues を確認してください。

SECTION 04 / HANDS-ON ・ 50 min

4. 開発ワークフロー改善と振り返り

本日の集大成。自チームの開発ワークフロー 7 工程を棚卸しして、AI 活用マップを作ります。その後、Copilot / Cursor / Claude Code の世界観を講師デモで共有し、最後にチームルール雛形を埋めて終わります。

4.1 演習 6:開発ワークフロー × AI 活用マップ [ 30 min ]

用意するもの

配布データの templates/開発ワークフロー×AI活用マップ_テンプレート.csv を Google スプレッドシートで開いてください。

  1. 新規スプレッドシート作成
  2. ファイル → インポート → アップロード → 上記 CSV
  3. 「現在のシートを置換」
  4. ファイル名を「自分の名前 _開発ワークフロー×AI活用マップ_v1」

7 工程

工程AI が得意人間が握るべき
1. 要件定義曖昧性指摘、想定 FAQ、類似事例検索ステークホルダ合意、優先度判断
2. 設計観点リスト、ADR ドラフト、技術選定比較最終アーキ決定、トレードオフ判断
3. 実装コード補完、リファクタ、コメント生成アーキ整合性、複雑なロジック設計
4. レビュー5 観点指摘、規約チェック優先度判定、設計意図検証、承認
5. テストテストケース生成、テストデータ生成受入基準定義、ビジネスロジック検証
6. デプロイデプロイスクリプト、変更履歴本番承認、ロールバック判断
7. 運用ログ要約、インシデント仮説、ポストモーテム初稿根本原因確定、対策決定
STEP 1 / 棚卸し ・ 10 min
7 工程それぞれで、自チームの実務タスクを書き出す
STEP 2 / AI 適用判定 ・ 10 min
「AI が引き受けられる部分」「AI に任せない部分」「適用ツール」「入力時のマスキング観点(何を伏せて何を残すか)」「効果見込み」「リスク種別」を埋める
STEP 3 / 優先度判定 ・ 5 min
効果 × リスク反転で並べ替え、上位 3 件に「1 ヶ月で試す ○」を付ける
STEP 4 / 答え合わせ ・ 5 min
hints/step06_workflow_map_hint.md で観点確認、_reference_完成例/開発ワークフロー×AI活用マップ_完成例.csv を比較
OK 基準

7 工程が埋まり、上位 3 件に○が付いた。

4.2 AI 駆動開発ツールデモ(講師画面) [ 12 min ]

受講者の手元操作は不要。今回の軸はブラウザ Gemini(対話型)です。以下の IDE エージェントは、対象を絞って次回以降に扱う発展テーマとして世界観だけ共有します。「こういう世界がある」を知っておくための時間です。

GitHub Copilot
従量課金(AI Credits)へ移行、2026/6/1〜
IDE 埋込デファクト。2026/6/1 から全プランが従量課金(AI Credits)へ移行し、インライン補完は非課金。Microsoft 自社モデル MAI-Code-1-Flash が Business / Enterprise 向け GA。Agent モード、Coding Agent(非同期 PR 生成)。
Cursor
Teams は使用量プール分離、2026/6〜
IDE 自体を AI ネイティブに置換。Composer 2.5(マルチファイル編集)、Background Agent、Bugbot。2026/6 の Teams 更新で、ファーストパーティ(Composer 2.5 等)とサードパーティ API の使用量プールを分離。
Claude Code
Claude Sonnet 5(2026/6/30、Sonnet 4.6 を置換)
ターミナル / IDE / デスクトップ / Slack で動く自律エージェント。大規模リファクタや CLI 自律実行が強み。Anthropic 社内では「実質コメント付き PR が 16%→54% に上昇」と報告。
Gemini Code Assist
無料(個人) / Standard / Enterprise
VS Code、JetBrains 全系列、Cloud Workstations、Android Studio 対応。Gemini 3.5 系。エージェントモード提供、1M トークン、IP 補償付き。Standard / Enterprise は学習対象外。
3 強の使い分け

主流は Claude Code / GitHub Copilot / Cursor の 3 強です。経験の長い開発者は平均 2.3 ツールを併用し、Claude Code は自律的なタスク実行、Copilot / Cursor はインライン補完という役割分担で使い分けています。出典:Developers Digest(2026/6)

OK 基準

3 ツールの役割の違い(自律実行/インライン補完)を 1 行で言えるようになった。

GitHub Copilot 学習データポリシー

Copilot Free / Pro / Pro+ の対話データは既定でモデル学習対象になり得ます。Business / Enterprise は契約上学習対象外で除外されます。法研システムズ様のような業界では、必ず Business / Enterprise 契約で導入することが前提となります。出典:GitHub Blog

4.3 チームルール雛形作成 [ 8 min ]

STEP 1〜4
配布データの templates/AI併用コーディング_チームルール雛形.md を自チーム版に書き換え

完成度よりも「議論を始める叩き台」を作ることを優先。第 2 回までに整理した自部署計画書のセキュリティ判断を、ここに転記してください。リーダー・マネージャと合意するのは研修後 1 週間以内が目安。

OK 基準

入力禁止データの可否テーブルが自チームの実データ名で 1 行以上埋まった。

4.4 振り返りと閉会 [ 残り時間 ]

ブレイクアウトで 3 つを共有してください。

  1. 自チームのワークフローで AI が最も効きそうな工程
  2. ガイドライン整備で 1 番悩みそうな点
  3. 1 ヶ月後に試してみたい 1 件
SECTION 05 / CLOSING ・ 10 min

5. 質疑応答・閉会

5.1 全 3 回シリーズの総括

テーマ到達点
第 1 回完全入門編:生成 AI との向き合い方業務で 1 件 AI を使えた成功体験
第 2 回基礎研修:リテラシーとプロンプト実践自部署 AI 活用計画書 v1
第 3 回(本日)エンジニア向け:AI 活用と業務効率化開発ワークフロー × AI 活用マップ + チームルール雛形

5.2 1 ヶ月後のレビュー推奨

1 ヶ月後にやること

  • マップで「○」を付けた上位 3 件のうち、最も気軽に始められる 1 件をチームに導入
  • 1 ヶ月後に効果測定(時間削減 / 品質指標 / 心理的ハードル変化)
  • チームルール雛形を v1 に磨き、リーダー・マネージャと合意
  • 結果を講師(安田)までメールでご共有いただけると、次回以降の研修教材に活かさせていただきます

5.3 用語集

Gemini Code Assist
Gemini Code Assist
Google Cloud の AI コーディング支援、IDE 拡張で提供
Slopsquatting
スロップスクワッティング
AI が推奨する架空パッケージ名を攻撃者が実在登録する手口
Prompt Injection
プロンプトインジェクション
入力データに悪意ある指示を仕込んで AI を乗っ取る攻撃
Assisted-by:
アシスト元タグ
Linux Kernel が定めた AI 支援コードのコミットタグ
Agent Mode
エージェントモード
マルチファイル編集や自律実行を行う AI 動作モード
DORA Metrics
DORA メトリクス
DevOps の 4 主要指標、AI 採用効果の測定基準としても利用
SAST / SCA
静的解析・依存解析
AI 生成コードの脆弱性検査の基本ツール
CLAUDE.md / REVIEW.md
レビュー規約ファイル
Anthropic Code Review でカスタマイズに使う設定ファイル
3 時間お疲れさまでした。全 3 回完走お疲れさまでした

本日のゴールは「自チームに 1 件 AI を組み込む 1 ヶ月計画」でした。マップに書いた 1 件、ぜひ来週から試してみてください。1 ヶ月後の振り返り結果を、安田までお知らせいただけると幸いです。次の研修テーマ(運用定着、AI ガバナンス深掘り、SaaS 開発特化など)のご相談もお気軽に。

参考リンク

  1. Gemini Code Assist 公式:codeassist.google
  2. Gemini for Google Cloud Pricing:cloud.google.com/products/gemini/pricing
  3. Gemini Code Assist Security / Privacy:docs.cloud.google.com
  4. Gemini Code Assist Release notes:developers.google.com
  5. GitHub Copilot Plans:github.com/features/copilot/plans
  6. GitHub Copilot 学習データポリシー変更(2026/4):github.blog
  7. Cursor Pricing:cursor.com/pricing
  8. Claude Code 公式:claude.com/pricing
  9. Anthropic Code Review(2026/3):claude.com/blog/code-review
  10. 2026 Agentic Coding Trends Report (Anthropic):anthropic.com (PDF)
  11. Linux Kernel Coding Assistants 公式:docs.kernel.org
  12. Doe v. GitHub case updates:githubcopilotlitigation.com
  13. Veracode 2025 GenAI Code Security Report:veracode.com
  14. Apiiro: 4x Velocity 10x Vulnerabilities:apiiro.com
  15. Snyk Slopsquatting Mitigation:snyk.io
  16. Cymulate CVE-2025-54794/54795(Claude Code):cymulate.com
  17. SecurityWeek: AI Code Agents Vulnerable to Prompt Injection:securityweek.com
  18. DORA State of AI 2025:dora.dev/dora-report-2025
  19. Stack Overflow 2025 AI Survey:survey.stackoverflow.co/2025/ai
  20. Microsoft Research: SPACE of AI:microsoft.com/research
  21. Google AI in software engineering:research.google
  22. メルカリ Project Double:engineering.mercari.com
  23. NTT ドコモ Copilot 導入事例:nttdocomo-developers.jp
  24. AI for Requirements Engineering (arXiv 2511.01324):arxiv.org/html/2511.01324v3
  25. GenIA-E2ETest (arXiv 2510.01024):arxiv.org/html/2510.01024v1
  26. STORIA法律事務所 AI と著作権 第 5 回:storialaw.jp/blog/12056
  27. claude-code-security-review GitHub Action:github.com/anthropics/claude-code-security-review
Givery Givery, Inc. / 株式会社 法研システムズ 御中